今回のブログは少し長くなります。
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「視野を広くしろ!」
「もっと広い目線で物事を見るんだ!」
「木を見て森を見ず、ではダメだ!」
そう言われました。
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なるほど。
言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。
会社を経営していると、ありがたいことに、いろいろな方からご指導をいただく機会があります。
もちろん、そのすべてを理解できるわけではありません。
その場では、
「なるほど。」
と頷きながら、心の中では、
「なるほど……?」
と思っていることもあります。
でも、それでいいと思っています。
なんでも勉強です。
自分では気づけないことを、人から教えていただく。
その瞬間には分からなくても、一度自分の中に持ち帰って考えてみる。
そして、
「なるほど、こういうことか。」
と自分なりの答えが出たら、やれることからやってみる。
どんなに小さなことでもいい。
何か一つでも、速やかに行動に移す。
私は日頃から、それを心がけています。
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だから今回も、考えました。
「視野を広く持て。」
その言葉を胸に、私は車に乗り込みました。
エンジンをかける。
いつもの音楽が流れる。
シートベルトを締める。
そして本社へ向かって車を走らせながら、改めて考えました。
「私が今すぐにできることは、何だろう?」
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季節は少しずつ秋に近づいていました。
少し前まで、この時間ならまだ明るかったはずなのに。
最近は、夕方になると急に日が落ちる。
「日が短くなってきたなぁ。」
そんなことを思いながら、県道17号線を南下します。
金曜日だからでしょうか。
駅前付近はいつも以上に混んでいました。
特に左車線が進まない。
前を見る。
赤いテールランプ。
その先にも、赤いテールランプ。
さらにその先にも、赤いテールランプ。
どこまで行っても、テールランプ。
まるで人生のようです。
いや、人生がそんなに渋滞していては困ります。
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くだらないことを考えながら、アイコスに手を伸ばしました。
一本吸い終わる。
まだ進まない。
もう一本吸う。
それでも、たいして進まない。
渋滞している間に、アイコスを二本吸い終えてしまいました。
いつもの私なら、少しイライラしていたかもしれません。
「なんでこんなに混んでるんだ。」
「前の車、もう少し詰めればいいのに。」
「こっちの車線の方が遅いじゃないか。」
そんなふうに、目の前の数十メートルのことばかりを考えてしまう。
ー
でも今日は違いました。
ふと、あの言葉を思い出します。
「木を見て森を見ず、ではダメだ。」
…………。
そうか。
今の私は、目の前の一台しか見ていない。
この渋滞にも、何か理由があるのかもしれない。
その先で工事をしているのかもしれない。
事故があったのかもしれない。
金曜日だから、みんなが少し早く街に出ているのかもしれない。
目の前の一台だけを見て、イライラしてはいけない。
もっと広く見る。
なるほど。
これが「視野を広くする」ということなのか。
少しだけ、分かったような気がしました。
ー
そして、もう一本アイコスを吸いました。
結局三本吸いました。
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本社に着きます。
車を停め、オフィスに戻る。
机には、まだ仕事が残っています。
メールを返す。
書類を見る。
数字を確認する。
現場の状況を確認する。
誰かに電話をする。
またメールが来る。
さっき終わったと思った仕事に、追加の資料が届く。
経営者の仕事というのは、不思議なものです。
「これをやれば終わり。」
という瞬間が、ほとんどありません。
一つの問題を解決すると、その横から別の問題が出てくる。
モグラ叩きに似ています。
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ただし、モグラ叩きと違って、たまにモグラから電話がかかってきます。
しかも、
「社長、ちょっといいですか?」
と言ってきます。
だいたい、ちょっとではありません。
そんなことを繰り返しているうちに、外はすっかり暗くなっていました。
気がつけば、オフィスにはもう私しかいません。
静かです。
昼間は電話の音や、人の声や、プリンターの音がしている会社も、夜になると別の場所のように静かになります。
私は、この時間が嫌いではありません。
仕事は好きです。
遅くまで仕事をすることも、それほど苦にはなりません。
むしろ誰もいなくなったオフィスで、一人で考え事をする時間は結構好きです。
今日のこと。
明日のこと。
来月のこと。
会社のこと。
社員のこと。
現場のこと。
お金のこと。
これからのこと。
社長という仕事は、答えを知っている人がやる仕事だと思っていました。
でも実際にやってみると、少し違いました。
答えがないことに、答えを出す仕事でした。
やるのか。
やらないのか。
進むのか。
止まるのか。
任せるのか。
自分でやるのか。
どちらを選んでも、未来のことだから正解は分かりません。
それでも決めなければならない。
考えることが、経営者の仕事。
正解のない物事に、それでも決断をすることが、経営者の仕事。
だから私は、考えます。
考えて。
考えて。
それでも分からなければ、もう少し考える。
そんなことを毎日繰り返しています。
ー
でも今日は、いつも以上に分かりませんでした。
「広い視野を持つ。」
言葉にすれば簡単です。
でも、広い視野とは何なのだろう。
会社だけを見ていてはいけないということなのか。
業界を見る。
地域を見る。
日本を見る。
世界を見る。
過去を見る。
未来を見る。
自分の会社の売上だけではなく、地域全体の流れを見る。
今年だけではなく、5年後を見る。
目の前の利益だけではなく、その先を見る。
社員一人の問題だけではなく、組織全体を見る。
なるほど。
たしかに、経営者には必要なことです。
「木を見て森を見ず。」
目の前の一本の木ばかりに気を取られていると、その後ろに広がっている森が見えなくなる。
会社経営も同じなのかもしれません。
一つの現場。
一つの数字。
一つのトラブル。
一人の社員。
それだけに意識を奪われてしまえば、会社全体の方向を見失う。
もっと高いところから見る。
もっと遠くを見る。
もっと広く見る。
…………。
分かったような。
分からないような。
私は仕事を終え、一階へ降りました。
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コーヒーを淹れます。
誰もいない会社で飲むコーヒーは、昼間より少し美味しい気がします。
コーヒーを飲みながら、またアイコスに火をつけました。
いや、アイコスに火はつきません。
こういう細かいところばかり気になるから、視野が狭いのかもしれません。
一本吸いながら、また考えます。
「視野を広く……。」
でも、やっぱり分からない。
私は、本当に木ばかりを見ているのだろうか。
そもそも森とは何なのだ。
会社なのか。
地域なのか。
業界なのか。
日本なのか。
もしかすると、もっと大きな話なのかもしれない。
人生なのか。
…………。
そこまで考えたところで、コーヒーがなくなりました。
ー
ー
ー
答えは出ませんでした。
時計を見る。
そろそろ帰ろう。
会社の電気を消します。
真っ暗になったオフィスを背に、駐車場へ向かいます。
車のドアを開ける。
運転席に座る。
ドアを閉める。
一日の仕事が終わったときの、あの少しだけ力が抜ける瞬間。
ー
エンジンをかけました。
ナビが起動します。
自宅までの道が表示される。
その画面を、ぼんやり眺めていました。
いつもの道。
いつもの交差点。
いつものコンビニ。
いつものガソリンスタンド。
画面の左下には、
「50m」
と表示されています。
…………。
そのときでした。
一日中考えても出なかった答えが、突然、頭の中に降りてきました。
そうか。
私は、難しく考えすぎていたのかもしれない。
「やれることからやってみる。」
そう決めていたじゃないか。
いきなり世界を見る必要なんてない。
いきなり10年先を見る必要もない。
今の自分にできることから始めればいい。
小さな一歩でいい。
今日より明日。
50mより、その先へ。
私はナビの画面に手を伸ばしました。
ー
ー
そして。
縮尺を、
50mから、
300mに変えました。
…………。
道路が小さくなった。
建物も小さくなった。
さっきまで画面の外だった場所まで見える。
駅も見える。
国道も見える。
街全体が見える。
私はしばらく、その画面を眺めました。
そして静かに呟きました。
「……視野が広がった。」
ー
その瞬間。
今日一日、私を悩ませ続けていたものが、少しだけ消えた気がしました。
人間、やればできる。
経営者として、また一つ成長できた。
そんな気がしました。
翌朝。
私はいつもより少しだけ自信を持って会社へ向かいました。
昨日までの私とは違う。
私はもう、50m先だけを見ている男ではない。
300m先まで見ている男です。社長です。
6倍です。
視野が、6倍になりました。
経営者として大きな成長です。
会社に着き、車を降りようとした、そのとき。
ふとナビを見る。
…………。
「300m」
私は思いました。
まだ狭い。
昨日あれだけ、
「もっと広い目線で物事を見るんだ!」
と言われたじゃないか。
300m程度で満足していいのか。
経営者たるもの、現状に満足してはいけない。
私は再び画面に手を伸ばしました。
500m。
1km。
2km。
5km。
どんどん街が小さくなっていく。
郡山が見える。
福島県が見える。
さらに縮尺を変える。
東北が見える。
日本が見える。
ついに、私の視野は日本列島を捉えました。
ー
ー
私は思いました。
「これだ。」
これが、経営者に必要な視野なのだ。
もはや、目の前の渋滞などどうでもいい。
現場の小さなトラブルも、どうでもいい。
メールが返ってきていないことも、どうでもいい。
日本列島から見れば、全部小さなことです。
私は、ついに森を見ることができた。
いや。
森どころではない。
日本を見ている。
満足して車を降りようとしました。
そのとき、ナビが言いました。
「ルートを外れました。」
…………。
視野を広げすぎて、
道を見失いました。
どうやら経営には、
広い視野と、
目の前を見る力。
両方が必要なようです。
勉強になりました。
ナビを50mに戻しました。

次回のブログは、
「空気清浄機のフィルターを製造する会社を視察訪問したら、信じられないくらい社内の空気が悪かった」
という内容を予定しております。
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